fc2ブログ

法律のお勉強

各論~財産犯 の記事一覧

窃盗罪

2016.06.07 (Tue)
AはM銀行甲支店の入口付近に設置してあるATMで30万円を引き出し、それを15万円ずつに分けて2つの封筒に入れたが、Aは片方の封筒を持ったが、もう片方をATMの上に置き忘れて出て行ってしまった。Aの後ろに並んでいた甲はAが封筒を置き忘れたことに気づいていたが何も言わず、そのまま封筒を鞄に仕舞いこんだ。甲の罪責は?


・占有概念
・占有の主体(Aなのか甲支店長なのか)。
スポンサーサイト



めも - 矮人の観場(わいじんのかんじょう)

2015.05.06 (Wed)
Aは,従業員Xに対し,旧知の古物商Yに絵画の売買の仲介を依頼するよう指示した。Xは,売却代金のうち100万円を懐に入れるつもりで,Yに絵画の売買を依頼した。絵画の客観的価値は500万円相当であったが,Yは,その絵画に関しおよそ見当はずれの高評価をした来店客Bに対し,「御目が高い。3000万円なら売りますよ」と言って売却した上,Xに「500万円で売れました」と言って現金500万円を渡した。Xは,100万円を懐に入れ,残りの400万円をAに渡した。X,Yの罪責を論じなさい。

横領罪と背任罪の区別(の基準)を論ずる場合

2015.05.03 (Sun)
「横領罪と背任罪の区別(の基準)」を論ずるのはどのような場合か。

〔1〕行為が横領罪と背任罪の両罪の構成要件に該当する可能性がある場合。
Ex銀行の支店長が貸付を受ける資格も信用もない人に無担保融資をした場合
支店長は,
・「他人(銀行)の事務処理者」(背任罪の主体)
・「他人(銀行)の財物(金銭)」を占有(横領罪の主体)
・占有している銀行の金銭を不法に処分(行為)


〔2〕横領罪または背任罪の成否のみが問題になる場合
①侵害の客体が「財産上の利益」→背任罪の成否のみが問題
②侵害の客体が「財物」&行為者に「財物の占有なし」→背任罪の成否のみが問題
③侵害の客体が「財物」&「財物の占有あり」&「財物の所有権が行為者にあり」
→背任罪の成否のみが問題(横領罪は「自己の占有する他人の物」)
④「他人の財物を行為者が占有」&行為者に「財物の処分権限なし」
→横領罪の成否のみが問題(背任罪の任務が存在しない)。

親族相盗例(刑法244条1項)

2015.04.26 (Sun)
Xは,妻Aの部屋でブランド物の高級バッグを見つけ,AがOL時代の貯金で買った物だと思い込み,これを処分して株式投資の資金の足しにしようと考えAに無断で持ち出して売却した。しかし,バッグはAが妹Bから一時借用していたものであった。Xの罪責如何。


1 Xの行為の窃盗罪の構成要件該当性
2 刑法244条1項の適用の有無・・・設問の場合には適用なし(最高裁平成6年7月19日決定)。
3 親族関係が存在すると誤信したことと窃盗罪の成否


(親族間の犯罪に関する特例)
第244条1項  配偶者,直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪,第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は,その刑を免除する。


刑法244条1項にいう親族関係が必要な範囲
〔判例〕 刑法244条1項の親族関係は,窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず,所有者との間にも存することを要する(最高裁平成6年7月19日決定)。

(1) 親族関係が必要とされる範囲については,保護法益からアプローチする学説と刑が免除される根拠からアプローチする学説があることに注意しておく必要がある。

(2) 保護法益からのアプローチ(曽根)
①本権説によれば,犯人と所有者との間に親族関係が存することが必要
②占有説によれば,犯人と占有者との間に親族関係が存することが必要
③本権及び占有説によれば,犯人と所有者及び占有者の双方との間に親族関係が必要

(3) 刑の免除の根拠からのアプローチ
①親族関係が必要とされる範囲は,親族相盗例の制度趣旨から決定すべき問題である(川端)。
②では,刑の免除の根拠は何か。
〔一身的処罰阻却事由説〕親族間の財産秩序は親族内部で維持させるのが妥当であるという政策的配慮から,国家の干渉を差し控えて,一身的に処罰を阻却したものである。
〔可罰的違法性阻却事由説〕家庭内では物の所有・利用が厳格に個人ごとに区別されておらず,その侵害行為の違法性は通常の場合よりも低いからである(平野・中森)
〔責任阻却事由説〕親族間では行為動機に対する反対動機が弱く,相互に窃盗罪を行わないことを期待し得ないからである。


〔めも〕
1 思うに、244条1項は親族間の財産秩序は親族内部で維持させるのが妥当であるという政策的配慮から「その刑を免除する」と規定されたものであり、このような規定の趣旨や条文の表現から,同条項は一身的処罰阻却事由であると解する。

このように考えると,財物の所有者あるいは占有者の一方でも親族関係にない者が含まれていれば,被害の処理が親族内部で可能な範囲を超えており,もはや刑を免除する政策的根拠が失われたといえる。

設例の場合,窃盗犯人Xと,バッグの占有者Aとの間には親族関係があるが,所有者Bとの間には親族関係がないので,244条1項の適用はない。

2 では,XはB所有のバッグをAの所有物であると誤信しているが,このように存在しない親族関係を存在すると誤信した場合,Xの故意は阻却されるであろうか。

上述のように,244条1項を一身的処罰阻却事由とする理解からは,処罰阻却事由の錯誤は故意の成否とは論理的には関係はないといえる。しかし、親族関係の錯誤の場合の行為者は、犯罪であるものの,処罰されない事実を認識しているのであるから,親族関係にない他人の物を盗む場合と同様の刑責に問うのは、行為者が認識した事実よりも重い犯罪で処罰することを禁じている38条2項の趣旨に照らして疑問がある。そこで,この場合には,244条1項の準用を認めて刑の免除を認めるべきである。
これによれば,Aの所有物と誤信したXには,244条1項が準用され刑が免除されることになる。



詐欺罪における「財産上の損害」

2015.03.14 (Sat)
条文上、「財産上の損害」は明記されていないが、詐欺罪が財産罪であることから、詐欺既遂罪の成立要件として財産上の損害が必要であると解すべきである。

では、何を財産上の損害と考えるべきか。詐欺罪は占有移転罪である。それゆえ、交付により移転した個別の物・利益が財産上の損害である。では、相当価格を支払うような取引が介在する場合には財産上の損害はないのか。被害者が給付したものに比して獲得しようとしたものが、経済的に評価して損害といいうる場合には財産上の損害があると考える。
 | HOME |  Next »
    1. 無料アクセス解析